日本薫物線香工業会

堺市

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堺から古寺巡礼

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京都嵐山その1

零陵香本舗 薫明堂 古寺巡礼

 紅葉の季節から新年にかけて、京都市内は観光客で賑やかになるが、今年は特に嵐山から渡月橋、嵯峨野にかけて例年以上の観光客が訪れているように伺える。洪水被害とその復興を連日テレビで放映した事も影響しているかと思うが、修学旅行も減り、京都に限らず観光客が減少している中で少しでも良い方向に向かえばと思う。
 ところで、漠然と嵐山に向って、観月橋あたりから天龍寺、竹林を越えて二尊院や嵯峨野に向かうと、それなりに風情が楽しめる手頃な散策コースになる。だからこそ人気が高いのも頷けるが、実際はこの限られた地域内で京都の長い歴史がバランス良く凝縮されているので見どころが多い。
 桂川は、嵐山周辺では大堰川と呼ばれるが、もともとは秦氏の開拓に因んだ名前であり、平安京ができるより遥かに以前から拓かれた場所という事になる。嵐山といえば現在なら京都市街西端にある風光明媚な場所という風情だが、歴史的に見ても重要性の高い場所だった。



 行楽客の多い季節は、渡月橋からの景色をゆっくりと楽しむ暇もないのが残念だが、紅葉の上に浮かぶような法輪寺の三重塔や本堂の屋根が魅力的なスカイラインを生み出している。寺伝によれば和銅6年(713年)の建立といわれ、平安京遷都以前からの古刹とされている。
 嵐山の麓に位置する法輪寺は、弘法大師の弟子にあたる道昌が安置した虚空蔵菩薩像と十三詣りで知られているが、それでも橋を渡った先にある数々の名刹に比べれば全国的に知られているとは言い難い。
 嵐山側から渡月橋を渡って、更に上流の方に向えば夢窓国師作庭の回遊式庭園で有名な天龍寺がある。秋になると、方丈から眺める曹源池に映り込む紅葉は魅力的だが、むしろ季節を問わず京都や嵐山を代表する景観のひとつかも知れない。天龍寺で紅葉を楽しむなら、この庭よりも塔頭のひとつである宝厳院の庭の方がより相応しいかと思う。庭全体を覆うような紅葉と、紅葉の中を縫うような水の流れが特徴的な回遊式の庭だが、近年再興された本堂から、丁度嵐山を借景とした奥行きのある庭が眺められ、観光地の喧騒から隔絶された静かな空間が楽しめる。



 一時期秋から冬にかけての京都は、若干観光客が減った時期もあったが、ここ1~2年はようやく回復してきたのと同時に、若い世代の行楽客が盛んに見られるようになった。テレビや雑誌で紹介されたからという訳でもなく、日本の伝統的景観を楽しむというよりも、街中から気軽に行ける自然の豊かなスポットとして親しまれ始めているのかも知れない。様々な世代の行楽客が往来する喧騒を包み込むような自然の景観は、暑さや寒さが和らいだ頃がより魅力的なのも一因だろう。



渡月橋から眺める嵐山 天龍寺方丈 宝厳院の庭園