堺から古寺巡礼
勝鬘院(しょうまんいん)愛染堂
大阪市内にある四天王寺は、日本書紀に記されるように聖徳太子により推古天皇元年(593年)に建立が開始された古刹であり、奈良の法隆寺と並ぶ、日本最古の本格的仏教寺院のひとつとして数えられる。その四天王寺の北側に少し離れて、ちょうど上町台地の東端辺りに勝鬘院(しょうまんいん)がある。
寺伝によれば、四天王寺にあった敬田院、施薬院、療病院、悲田院のうちの施薬院に始まり、聖徳太子がこの地で勝鬘経を講ぜらたことから、施薬院が勝鬘院とも呼ばれるようになったとされる。その後、平安時代に金堂の本尊として愛染明王が祀られるようになり、それ以降愛染堂と呼ばれ、今日でも愛染堂の名前は大阪市内では広く親しまれている。
境内には、慶長2年(1597年)豊臣秀吉により再建された大阪市内最古の木造建造物である多宝塔、元和4年(1618年)徳川秀忠によって再建された金堂が残り、また小説「愛染かつら」の木のモデルとされる桂の古木がある。市街地に立つ寺院だが、街中に溶け込むような小規模な寺院と言うより、ゆったりとした広さを感じさせる閑静な寺院と呼ぶべきだろうし、6月下旬から7月にかけての愛染まつりの期間以外は、静けさを感じさせる街中のポケットパーク的な佇まいを感じさせる場所と言える。その賑やかな愛染まつりも、新型コロナ感染症の蔓延防止もあって長らく中止されていたが、今年からようやく三年ぶりに開催され、大阪の夏の風物詩が再開されることになった。
谷町の生國魂神社から南へ歩くと静かな寺町に入り、織田作之助の小説「木の都」の舞台となる口縄坂(くちなわざか)に到着する。更に南下すると愛染堂に辿り着く。そのから谷町筋を横断して天王寺駅の方に歩くと四天王寺の伽藍があり、更にその先が賑やかな天王寺駅前の繁華街がある。大阪らしい賑やかさと下町的な風情が残る場所だが、あまり観光地然としない愛染堂は、その周辺も含めて魅力的な場所だと思う。適度な散策路の一角にあり、大阪の歴史を実感させる場所でありながら、都会のオアシス的な居心地の良さを兼ね備えている。
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境内中央の金堂
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愛染堂の多宝塔
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織田作之助「気の都」の舞台、口縄坂
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